「歌詞作りは、フレーズやアーティキュレーションを学ぶのに とても効果的」 というお話を書きました。
今回は、「実際 どんなことを しているの?」 という部分を、
実際の生徒さんの楽譜を見ながら ご紹介したいと思います。
■ 題材は、ブルグミュラー『やさしい花』
今回 一緒に見ていく曲は、
ブルグミュラー作曲『やさしい花』(Tendre fleur)。
多くの生徒さんが通る、 美しく やわらかい一曲です。
■ 「レガート」と「スタッカート」が混在する難しさ
冒頭の右手部分。
同じ形の "スラー+スタッカート" の2音が、 4回連続で登場します。
さらに、 音型は少しずつ 上向 していきます。
この2小節、 本来は、
・どこか一箇所だけ強くならない
・ゴツゴツしない
・自然な流れを保ちながら
・優しく、柔らかく弾き切る
という、 実はかなり高度なこと が求められています。
でも 小さな生徒さんに、
「自然なフレーズ感で」
「アーティキュレーションを整理して」
「やりすぎないクレッシェンドで」
と説明しても、 なかなか 伝わりません。 笑
そこで登場するのが、
アンルーク特製「歌詞作り」 です。
今回つけた歌詞
この部分には、 こんな歌詞をつけました。
この一文を、
2小節の流れに 乗せて 歌いながら 弾いてもらいます。
たったこれだけのことで ── 音が変わるのです。
■ 歌詞がもたらす、7つの効果
この『やさしい花』の冒頭で、
歌詞を つけることによって 自然に身につく ことが、たくさんあります。
レッスンの中で、私が「これは すごい!」と 感じている 7つの効果を ご紹介します。
「きょう」「こそ」「おは」「なが」── という 2文字の単語 によって、
2音を 自然に ひとまとまり として 感じられます。
「スラーでつなげて!」と説明するより、 ずっと自然 です。
この曲のスタッカートは、 「強く切る」のではなく、 柔らかく軽いスタッカート。
歌詞で歌うと、
「きょ "う"」「こ "そ"」のように、
2文字目が 自然と 軽くなります。
すると、 アクセントのない、 柔らかいスタッカート が 自然に 生まれます。
途中、 「なが|さく」 の部分には、 同じ音の連打 があります。
でも 日本語として見ると、
「が」は 接続する言葉、
「さ」は 新しい単語の始まり。
つまり、 同じ音・同じ長さでも、 言葉の役割が違う。
すると、 自然と 音のニュアンス も 変わるのです。
これは、 "機械的ではない演奏" へ繋がっていきます。
「今日こそ お花が 咲くだろう」── 一文として 歌うことで、
2小節が 一つの大きなフレーズ として まとまります。
音符が "ぶつ切り" ではなく、"言葉の息" でつながっていきます。
『やさしい花』は、p delicato ── やさしく、繊細に という指示。
そっと 小さな声で 歌詞を歌いながら 弾いてもらうと、
力まずに、本当に やわらかな p が 出てきます。
音型は 上向 しています。
でも、 ただ 機械的に 「だんだん大きく!」 としてしまうと、 やりすぎてしまいます。
歌詞で歌うと、
「今日こそ…!」 という 期待感 が、 自然な呼吸 を 生みます。
"どう歌うか" を 大切にすると、
頭で考えなくても、 自然な< > が 生まれてくるのです。
そして 何より大きいのは、 演奏に 感情が宿ること。
ただの
♪ レファファラ…
ではなく、
「今日こそ咲くかな」 という 願いや 期待 を持って、
最初の一音を 弾けるようになります。
それだけで、 音楽は 大きく変わります。
■ 音符の奥にある「言葉」と「気持ち」
楽譜には、たくさんの記号や指示が 書かれています。
でも、それを 一つひとつ "正しく" 守ろうとするだけでは、
音楽は なかなか 生きてきません。
「ここには、どんな景色が見える?」
「どんな気持ちで 言ってるんだろう?」
── そんな ふうに 音の奥を のぞいてみる。
たった一文の歌詞 をつけるだけで、
指の動きも、リズム感も、強弱も、フレーズ感も ──
たくさんのことが、いっぺんに 変わっていく のです。
ただ 音を並べるだけではなく、
「どんな景色が見える?」
「どんな気持ち?」
を 大切にしながら、
音楽を 育てていきたいと 思っています。