こんにちは。
ピアノ教室アンルークの東代です。
前回の「モチベーションのお話 ②」では、
「モチベーションを保つために具体的にすべきこと」についてお話ししました。
第3回では、見事にモチベーションの波を何度も乗り越えて
有終の美を飾った生徒さんの実例をご紹介しながらお話ししたいと思います。
■ 「練習しないなら、やめるべき?」
ピアノを習うなら、毎日練習するのが当たり前。
そう思われる方はとても多いと思います。
私自身も、以前はそう考えていました。
「練習しないなら、もったいないからやめた方がいいのでは…?」
そんなふうに感じるのも、自然なことです。
でも私は、
▶"必ずしもそうではない"
と考えています。
■ 大切なのは「続けること」
もちろん、
- ピアニストを目指す
- コンクールで結果を出す
といった明確な目標がある場合は、
日々の積み重ねが欠かせません。
でも多くのご家庭は、
「楽しく長く続けられたらいいな」
そう願っていらっしゃるのではないでしょうか。
それならまずは、
▶"練習を強要しないこと"から始めてみてほしいのです。
■ モチベーションが戻った実例
小学1年生から通ってくれていた、ある男の子のお話です。
最初はやる気満々で、
とても楽しそうにレッスンに来てくれていました。
ところが、小学2年生の春。
お母様からご連絡がありました。
「全然練習しないんです。
本人に聞いたら、"やめてもいいかな"と言っていて…
先生、本人と話していただけますか?」
レッスンで彼に聞いてみました。
「ピアノ、嫌いになっちゃった?」
すると彼は、
「ううん、ピアノは嫌いじゃない。
でも、練習はしたくない」
… そうだよね。
その気持ち、とてもよく分かります。
そこで私はこう提案しました。
「じゃあ、お母さんがOKしてくれたら、
おうちでの練習は一旦お休みしようか。
先生のところに来たときに、一緒に練習しよう!」
お母様も了承してくださいました。
■ 「NO練習」からのスタート
そこから、いわば
"NO練習レッスン"が始まりました。
普段はおうちでの練習はなし。
でも発表会の曲が始まると、
その曲だけは少しだけおうちでも弾いてくるように。
ある年は、
お父様が一緒にパズルのように譜読みを手伝ってくださったこともあったそうです。
そうして彼は、
2年生、3年生、4年生、5年生と、
毎年発表会で少しずつレベルを上げながら、
しっかりと弾き切ってきました。
■ 6年生、最後の決断
そして6年生の夏休み明け。
お母様から、
「急ですが今月でピアノをやめることにしました」
というご連絡がありました。
遊びに夢中になり、
塾もお休みすることが増えてきたため、
習い事を整理しようという判断だったそうです。
正直、とても残念でした。
今年が最後の発表会になると思っていたからです。
そこで私はお母様にお伝えしました。
「発表会まであと半年あります。
ここでやめてしまうのは、もったいないです。
"6年間続けた"という経験は、
きっと大きな宝物になります。」
その言葉をお母様から彼に伝えていただき、
数日後 ──
「2日考えて、"最後までやる"と本人が決めました」
と、お返事をいただきました。
■ やる気スイッチが入った瞬間
嬉しい気持ちと同時に、
実は少し不安もありました。
なぜなら、
発表会1ヶ月前になっても、
曲がほとんど仕上がっていなかったからです。
でも!!! 待っていた甲斐がありました。
本番2週間前。
彼の中で「まずい」と思う瞬間が来たようです。
そこからは ──
▶驚くほどの集中力と、
▶何度も何度も練習を繰り返す粘り強さ。
最後は、
本当に立派に弾ききりました。
舞台袖から見守りながら、
思わず涙が出てしまいました。
■ さらに嬉しい出来事
そして後日、
もう一つ嬉しいご報告がありました。
小学校の卒業にあたり、
6年生全体での合奏があり、
難しいソロパートに立候補。
立候補しただけでもスタンディングオヴェーション級な事なのに、
かなり大勢立候補したオーディションで見事選ばれ、
2番目に難しいソロを任されたそうです。
その演奏動画を見せていただきました。
大勢の前で、堂々とソロを弾く姿に、
私自身が大きなご褒美をもらった気持ちになりました。
本当によく頑張ったね。
最後まで続けてくれて、ありがとう。
これからの人生も
「やめちゃおうかな。」の波を
エイっと乗り越えたら、
きっと新しい景色が見えるよ。
■ 伝えたいこと
子どもは、
すぐに変わるわけではありません。
でも、
- 安心できる場所があり
- 否定されず
- 見守られながら続けていく
ことで、
"ここぞ"という時に力を出せるようになります。
モチベーションは、
▶「上げるもの」ではなく、
▶"戻ってくるもの"
なのかもしれません。