随分前のことです。
友人のお子さんが出演する 発表会を 聴きに伺いました。
その日 ──
私は ある方の演奏に 心を揺さぶられ、
気づけば 涙が止まらなくなっていました。
■ 演奏者は ──ハンチング帽の おじいさま。
演奏なさっていたのは ──
おそらく 70歳前後 と思われる、男性の方。
- ハンチング帽
- ネルシャツ
- ジーンズ
- スニーカー
発表会というと、
少し改まった服装の方も 多いものですが ──
その 自然体な姿が、とても 印象に残っています。
演奏されたのは ──
▶『Everything』。
ピアノ伴奏による、フルートソロ。
■ 「上手」とは、少し違う演奏。
正直に言うと、
技術的に 完璧な演奏では ありませんでした。
音程も 少し不安定。
ところどころ 危うさもある。
推察でしかありませんが、
フルートを始めて、それほど 長くはないのではないか ──
そんなふうにも感じました。
でも。
私はその演奏に、
なぜか 強く 心を動かされた のです。
■ 息が混ざった、"歌っているような" 音。
その方のフルートは ──
私の知っている「綺麗なフルートの音」と、少し違っていました。
まるで "歌っている" ような音。
「上手に吹こう」というより、
「この曲を 届けたい」 ──
そんな気持ちが、
音から まっすぐ 伝わってきたのです。
■ なぜ、涙が出たんだろう。
演奏中、
私は なぜか 涙が止まらなく なってしまいました。
後から、「なんで あんなに 泣いたんだろう」と 考えました。
『Everything』── 言わずと知れた、名バラード。
もちろん 曲の力もあるのですが、
それだけでは ない 気がしました。
きっと 私は ──
▶その方の "直向きさ" に、心を打たれたのだと思います。
もちろん、技術は 大切です。
でも ── 人の心を動かすのは、それだけでは ない。
好きな曲を 奏でたい、という気持ち。
今の自分で、精一杯 向き合う 姿勢。
そういうものに、
私たちは 感動するのかもしれません。
■ Everything × 人生を重ねた人。
そして 今 思うと ──
あの感動を より大きくしていたのは、
選曲との "意外な組み合わせ" も、大きな要因だったかもしれません。
ハンチング帽に ネルシャツ、ジーンズ姿の おじいさん。
その方が 奏でたのが、『Everything』。
"若い恋人たちの曲" というイメージを 持つ方も、多いかもしれない曲。
そこに ──
人生を重ねた人だからこそ 出せる 深みや切なさのようなものが、
音に滲んで 化学反応 を 起こしたのかもしれません。
きっと ──
「似合う・似合わない」なんて、本当は 音楽には関係ない。
自分の人生を通して 奏でる。
その姿と音が、私の心を まっすぐ 射抜いたのだと 思います。
■ 「何歳からでも 遅くない」と 思えた日。
その演奏を聴きながら、
私は 強く 思いました。
遅くないんだな。 ── あの日の演奏が、教えてくれたこと。
大人になると、
つい 「今さら 始めても…」 と 思ってしまいます。
失敗したくない。
恥をかきたくない。
上手くできる保証が 欲しい。
でも ──
あの日の演奏には、
そんな "守り"が ありませんでした。
ただ、
好きだから 吹いている。
その真っ直ぐさが、本当に 素敵だったのです。
■ 音楽は、「上手な人だけのもの」では ない。
ピアノも 同じ。
テクニックに、目や耳は 行きがちです。
でも 音楽は 本来、
「表現」や「楽しむこと」 と 深く結びついているもの。
「音楽って いいな」
「この曲、好きだな」
「弾けるように なりたいな」
そんな気持ちも、
ずっと 大切にしてほしい と 思っています。
あの日 ──
一人のフルート演奏者の方から、
私は それを 改めて 教えていただいた気が しています。
何歳からでも、
好きを 奏でて いいんだ ♪